小学館女性メディア Webサイトリニューアル成功の秘訣
こんにちは! メディア・ソリューション部の榎並です。
先日、パブリッシャー向けログリー主催イベント“NEURON” を開催し、ご登壇いただいたパブリッシャー様より「Webサイトリニューアル成功の秘訣」について語っていただきました。
今回はメディアイベント登壇者インタビューの第2弾をお届けします!
株式会社小学館 山野 明登さんよりWebサイトリニューアルにあたり、具体的に取り組んだ内容についてインタビューしました!
メディア・ソリューション部
多数の著名人に似ていると言われいじられる日々。社内のムードメーカー的存在として活躍(?)しています。
株式会社小学館
Webプロデュース室 副課長
榎並:
「インタビューを引き受けていただき、ありがとうございます。現在のご所属や業務内容についてお教えいただけますでしょうか。」
山野:
「小学館のデジタルメディアグロースのサポート・コンサルティングをしています。開発・分析・運営・マーケティング領域で小学館のデジタルコンテンツの成長を支援しています。
女性メディアのリニューアルは美的.com、Precious.jp、Oggi.jp、Domaniなどの開発ディレクションを担当しました。
2016年12月頃リニューアルに着手し、約半年ほどかけて各サイトリリースに至りました。」
榎並:
「リニューアルの際、アドサーバー利用も兼ねて弊社レコメンドウィジェットの導入についてご相談いただいたことを今でも覚えています。たくさん業務がある中で、すべてのサイトを約半年かけてリリースした山野さんすごいなぁと思っていました!
これまでの経歴についても教えてください。」
山野:
「新卒で株式会社扶桑社に入社し、広告営業を2年間、編集を6年間経験しました。その後は楽天株式会社で楽天市場のWebプロデューサー/ディレクターをマネージメント含め8年経験し、2016年4月に小学館に入社しました。」
榎並:
「広告、編集、プロデューサー/ディレクターと幅広い領域を経験されたんですね!
イベント時のプレゼンでは美的.comのリニューアルについてお話いただきましたが、美的.comではリニューアルした結果、どう変化しましたか?」
山野:
「DAUがリニューアル直後に約2倍に、その後も成長を続け2019年1月時点ではMAU900万以上にまで成長しました。」
榎並:
「すごい成長ですね!!」
リニューアル成功の秘訣は、サイトツリーと内部リンクの最適化
榎並:
「リニューアルはどのような目的があったのでしょうか?」
山野:
「リニューアル自体が目的ではなく、TOPページから来たユーザーが読みたい記事に辿り着いていないのでは……? という仮説があったので、サイトのデザインではなく、サイト内の構造およびナビゲーションの改善が必要だと感じていました。
デザインのトーン&マナー(トンマナ)変更を重視したリニューアルが多いですが、トンマナの変更だけではあまり意味はないと考えています。
ユーザーが記事を探せるか、また読みやすいかどうかをユーザーファーストでアクションを考えました。その結果、デザインではなく情報整理が最重要ではないかと考え、構造の見直しから始めることにしました。」
榎並:
「なるほど! 見た目ではなく、サイト内部構造そのものを見直したのですね。
たしかにリニューアルというと、デザインのトンマナ変更を重視してしまうかもしれませんね。
具体的には、どのように構造を変更されたのでしょうか?」
山野:
「リンクジュースをつなぐ、つまりTOPページに来たユーザーが大カテゴリ → 小カテゴリ → 記事ページ → 小カテゴリ → 大カテゴリ → TOPページへとサイトの中を迷わず歩けるように設計しました。(※1)」
(※1)
「具体的には、サイトツリーのカテゴリ(大カテゴリ、中&小カテゴリ)整理です。美的.comの特徴は「読み物ページ」「商品情報ページ」の2種類の記事ページがあります。「読み物ページ」「商品情報ページ」は情報の種類が違うにも関わらず、置き場所が混在していたので、大カテゴリでは「読み物ページ」のツリーと「商品情報ページ」のツリーに整理しました。
中&小カテゴリについては、新しくつくる中カテゴリと削除するカテゴリを整理しました。
事業側が読ませたいカテゴリをつくるのではなく。ユーザーが読みたいカテゴリを検索数のデータでユーザーニーズを調べながら取捨選択しました。例えば、ヘアカテゴリでいうと“ショート” “ボブ”は用意していたのですが、“ショートボブ”の需要がある……! というような気づきがありました。
また、雑誌とWebではライティングのトンマナが少し異なるのかな と思います。例えば、Web上ではショートヘアのカテゴリを“ショート”と記載するのではなく、“ショートヘア”と書いたほうが、ユーザー目線では親切というようなことがありえると思います。」
榎並:
「雑誌とWebではユーザーの導線は異なりますよね。本当に必要なカテゴリかどうかの判断も迷いそうです。」
山野:
「サイトツリーの設計時に注意したポイントとしては、カテゴリページを最適化することです。カテゴリページが多ければ多いほど良いというのは間違いです。編集者は書きたいコンテンツが多いので、どうしてもカテゴリページをたくさんつくろうとしてしまいます。そうではなく、ユーザーにとって本当に需要のあるカテゴリだけを残していくことが重要ですね。
ただ、データだけでカテゴリを最適化するのは危険です。データに現れない未来のトレンドなどは編集者が一番詳しいので、編集者が感じている読者ニーズとすり合わせをすることが重要です。」
榎並:
「データと編集者が感じている読者ニーズとのすり合わせ、簡単なようで難しい気がします。」
山野:
「そうですね。カテゴリ変更は非常に大変な作業です。美的.comの場合、歴史の長いサイトで所有している記事が膨大なので、コンテンツ量に対して大カテゴリ、中カテゴリ、小カテゴリに記事を格納し直すことは容易ではありません(笑)
まとめると、美的.comのリニューアルはデザインではなく情報整理を最重要視し、整理した大カテゴリ、中カテゴリ、小カテゴリに記事をリンクでつなぐ <内部リンクの最適化> = <ナビゲーション整理> を実施しました。(※2)
サイトツリーを上から下まで行き来できるようUIに落とし込むことを大切にしたことが、リニューアル成功の1つの要因だったかと思います。」
リニューアルの背景はプロダクト品質の向上
榎並:
「リニューアルの裏側には媒体戦略などがあったのでしょうか?」
山野:
「媒体戦略というよりも、プロダクトの品質向上を目指してリニューアルを実施しました。もともと美的.comは良質な記事をたくさん保持しているメディアです。そういう意味でユーザーにもっと良質でいろいろな種類の記事と出会う機会を増やしたいと思いました。だから、出版社のサイトでプロダクトの質を追求するということは、非常に大事なことだと思います。
そのため、記事を格納する箱である、Webサイト自体の使い勝手の良さを追求する必要があると考えています。今回美的.comを例としてあげていますが、基本的にすべての媒体で同じような考え方の設計をしています。小学館のデジタル戦略として、プロダクトそのものの質の向上は今後どんどん推進していきたいです。」
榎並:
「プロダクトの品質向上、弊社も見習うべきところです。」
今後の構想
榎並:
「最後に、今後の構想についてお教えいただけますでしょうか?」
山野:
「ユーザーにとって良いプロダクトにするためには、メディアが「読んで終わりというサービス」からどう進化できるのかを考えていきたいです。記事で紹介されているコスメや洋服で気に入ったものがあればそのまま購入できるとか、気になるイベントやレストランがあったらそのまま予約できるとか、ユーザーが読んだ後、何らかの行動につながるサービスに進化できると良いなと思います。」
榎並:
「良いプロダクトにするためにどう進化できるか、という観点では弊社も課題があると感じています。貴社のお力になれる機能開発、新サービスを提供できるようプロダクトを進化させていきたいです。」
山野さんありがとうございました! 今後とも、よろしくお願いいたします!