ネイティブ広告とは何か?

2014年2月20日
吉永浩和
マーケティング

今回から数回に分けて、ネイティブ広告についてご紹介します。まだまだ認知されていない広告手法ですが、海外での状況なども踏まえて書いていきます。

曖昧なネイティブ広告

2013年あたりから、米国を中心に「ネイティブ広告」というキーワードが登場してきました。ログリーも自社サービスでネイティブ広告プラットフォーム(logly lift)を展開していますが、ディスプレイ広告とは違い、まだまだ世の中には浸透していません。 

また、定義が曖昧でさまざまな解釈が出てきています。しかしながら、そのコンセプト自体は新しいものではありません。

そもそも、なぜ曖昧かというと、ディスプレイ広告のように「定まったサイズ」「フォーマット」が存在していないのが1つの要因と考えられます。もちろん、言葉が定義されてから商品が生まれてくるものでもないため、当たり前といえば当たり前なのですが(ディスプレイ広告も、かつては同様に定義が曖昧なものでした)。

メディアサイトの多くは、その時代に合わせて新しいスタイルの広告を模索し、消費者に受け入れられるための商品を開発してきました。HTML5によるWebの新しい表現方法、スマートフォン・タブレットといったデバイスの登場などにより、広告のスタイルも変わってきています。

そして、メディア主導でさまざまなスタイルの広告が登場し、そこにある種の共通性が見受けられるようになりました。メディアのデザインに自然な形で広告が表示され、また、広告の内容もメディアのコンテンツとマッチするものが出てきました。そこでそういった広告を総称して「ネイティブ広告」と呼ぶようになったのです。

ネイティブ広告の定義

ネイティブ広告のイメージは、Facebook、Twitter、LinkedInなどの大手ソーシャルメディア上で提供されている広告商品が、大きく印象付けている感があります。

各社はコンテンツを中心に、そのデザインや消費形態に合う広告フォーマットを自ら作り出してきました。 

ちなみに、Wikipediaによるとネイティブ広告(Native advertising)の定義は、

Native advertising is an online advertising method in which the advertiser attempts to gain attention by providing content in the context of the user’s experience.

→ 広告主がユーザー体験に合わせてコンテンツを提供し、ユーザーの注目を得る広告

と書かれています。

ユーザー体験というのは、読者がメディアのコンテンツを消費している時という意味で、ニュースサイトで記事を読んだり、Facebookでタイムラインの投稿コンテンツを見ていたりする時です。そして、その同じ行動の中で接する広告、ということになります。

また、それに続けて、 

Native ad formats match both the form and the function of the user experience in which it is placed. 

→ ネイティブ広告のフォーマットは、メディアのデザインと機能に統合される

とあります。つまり、ニュースメディアであれば記事に合わせ、ソーシャルメディアであれば、友人・知人の投稿コンテンツに合わせて、そのメディアの持つメインコンテンツと同じ消費行動、つまり機能の中で提供されます。

そのほか、画像サイトであれば画像、映像サイトであれば映像コンテンツの広告であるほうが自然で、ユーザーがそのメディアで体験できるコンテンツと同じになります。

そして、ユーザーがそのメディアに訪れるには何らかの理由があるわけで、その理由に合致しているコンテンツや広告であれば、よりユーザーの注目を得られるようになります。

このように、メディアによってユーザーが体験できるコンテンツや機能が異なるために、ネイティブ広告もメディアごとに異なるものとなり、定義としては曖昧に思えてしまうのかもしれません。

広告主にとっての利用目的

ネイティブ広告を利用する目的は、何でしょうか? 一般的に、ユーザーが自然な行動の中でネイティブ広告に接触した場合、ユーザーとのエンゲージメントが高まるといわれています。これは、消費者と広告主の信頼関係が向上する、ということでしょうか。

ここでは、米国でネイティブ広告のプラットフォーマーといわれる3社の利用目的について紹介します。

1社目は、「インフィードタイプ」という、ニュースサイトなどのヘッドライン間に挿入するタイプのネイティブ枠を提供するSharethrough社です。

Sharethrough

Introducing STX, the First and Largest In-Feed Ad Exchange — and What’s Ahead in 2014

Introducing STX, the First and Largest In-Feed Ad Exchange — and What’s Ahead in 2014

Major brand advertisers like Pepsi, Intel, Jim Beam, and Nestle use Sharethrough to distribute content 

上記のブログの中で、 

→ ペプシ、インテル、ジムビーム、ネスレなどの主要ブランドがコンテンツを配信するために利用している

とあり、ブランドのためのコンテンツを配信する仕組みであるといっています。

次に、レコメンドタイプでコンテンツへの誘導枠を提供しているOutbrain社です。 

Outbrain

Outbrain

Engage Your Audience

Increase engagement for all of your content…

Amplify Your Content

The audience coming from Outbrain is already in content consumption mode, therefore more engaged and more likely to stay longer.

同社は、

広告ではなく、コンテンツであることを強調し、

→ コンテンツへオーディエンスの興味を惹きつける

誘導したオーディエンスはコンテンツを読もうとしていて、よりエンゲージメントを高め、より長く滞在する

とあります。

最後に、Outbrain社と同じレコメンドタイプのTaboola社です。

Taboola

Taboola

…discover massive new audiences that are targeted, engaged, and interested to consume the content on your own site. 

→ コンテンツに興味を持ちそうで、エンゲージしそうなオーディエンスへ配信する

とあります。

3社に共通していることは、「コンテンツ」を重視しているということです。

ログリーでも、ニュースサイトにネイティブ広告として記事コンテンツを表示した場合、遷移先の記事コンテンツでユーザーの滞在時間が長くなる、Facebookのいいね!数が増えるといった事例があります。しかしながら、それはネイティブ広告だからというよりも「そのような結果につながるコンテンツであるから」だと思われます。つまり、いくら自然な形で広告が現れても、コンテンツが期待外れであっては、エンゲージメントは得られません。

ただ、今までいくら質のよいコンテンツを作っていても、「広告だから」という理由だけでクリックされていなかったことも多々あると思われます。今までの手段だとリーチできなかったユーザーは確実にいて、そういう観点でネイティブ広告はそれらユーザーへリーチできる可能性があるのだと思います。それを評価するために、アトリビューション分析や広告計測ツールを通して、最初の接触であるかを確認するのもおもしろいと思います。

ネイティブ広告はエンゲージメントを高める、と書きましたが、それで広告主の目的は達成するのでしょうか? 米国ではブランドの利用事例が多いですが、プロモーションを主体とする企業においてエンゲージメントだけではなく、リード獲得や購買までもつなげたいことでしょう。

ネイティブ広告だからといって、ブランディング利用という位置付けだけではなく、プロモーションなども有用と考えます。ただし、その場合には、ネイティブ広告の意味を理解した上で、媒体に合わせてコンテンツやランディングページを作る必要があります。今まで使っていた素材をそのまま利用しても、あまり意味がないかもしれません。なぜなら、それらはディスプレイ広告などのほかの広告用に“最適化”されているわけですから。

したがって、ネイティブ広告にはそれに合わせたコンテンツページやランディングページを用意する必要があります。ただ、最初から完璧なコンテンツができるわけではないので、多くのコンテンツで試してみるのが一番です。

ログリーの場合、コンテンツとしてはブログを利用してみることをおすすめしています。手軽で、大きなコストがかからずに評価できるからです。そして傾向をつかんだ後に、少しずつ改善していくという手法が有用です。

最後に

ネイティブ広告は、その言葉だけが先行している感があり、市場としても実体としてもこれからその真価を問われることになります。だからこそ、ログリーとしては一方的な解釈ではなく、海外を中心として一般的になりつつある定義をきちんとお伝えし、市場を混乱させないようにしていきたいと考えます。

次回は、IAB(米ネット広告業界団体)が発表している「THE NATIVE ADVERTISEMENT PLAYBOOK」を紹介します。このプレイブックが発表された背景としては、まだまだ定義が曖昧であるからと書かれており、米国でも間違った方向にいかないようにするという業界の姿勢が見受けられます。

今回はネイティブ広告について、その背景や利用目的について紹介しました。ネイティブ広告について興味を持たれた方は、ぜひログリーにお問い合わせください。

では、また次回。

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著者紹介
吉永浩和
吉永浩和
ログリーの代表です。データ分析をコアコンピタンスとして、アドテク事業/メディアテクノロジー事業を展開しています。