NYタイムズが「広告主」として出稿したネイティブ広告コンテンツとは
NYタイムズは今月上旬から、外部のメディアサイトのネイティブ広告を利用し始めています。同社は年初からネイティブ広告の提供を開始していたので、ネイティブ広告メディアとして今後の展開に注目していました。そのNYタイムズが立場を変えて、「広告主」として他サイトのネイティブ広告にコンテンツを出稿したのです。そこで、どのようなコンテンツを配信しているかを見ていきましょう。
NYタイムズが利用したネイティブ広告提供メディアは「Mashable」です。Mashableはインターネット分野をカバーしたオンライン・ニュース・メディアです。フェイスブックなどのソーシャルメディアとの連携に早くから力を入れています。ネット業界の関係者や先端ユーザーには良く知られているサイトです。
そのMashableのメディアサイトから、NYタイムズが9月初旬から4本のネイティブ広告向けのコンテンツを配信することになっています。すでに次の3本の記事が掲載されていました。
“9 Cultural Icons Who Have Written for ‘The New York Times’,”
“11 Inspiring Videos That Will Restore Your Faith in Humanity,”
“A Brief Look at the (Surprisingly Long) History of the Cellphone,”
いずれのコンテンツもNYタイムズのスタッフがまとめたリスト記事です。コンテンツの素材はすべてNYタイムズの過去記事です。たとえば最初の9つの文化的アイコンは元大統領のケネディーやU2のボノなどの有名人が投稿した記事を紹介し、次の11の感動ビデオはNYタイムズが制作したビデオのコレクションです。最後の携帯電話のコンテンツは1983年からこれまでの歴史をNYタイムズの過去記事を引用しながら紹介しています。
例として2番目のコンテンツ本文(冒頭部)を以下に掲げておきます。一見すると、Mashableの編集記事のような印象を受けます。
本文の始めに、NYタイムズのロゴと”BY THE NEW YORK TIMES”が明記されていたので、NYタイムズの寄稿記事のようにも見えました。でもその上にBrandSpeakとのラベルが貼られており、次のような説明が付いています。「この欄はスポンサード記事であり、Mashableの広告主(ここではNYタイムズ)は自前のコンテンツをオーディエンス(つまり読者)と共有できるようになっています。Mashableの編集スタッフはコンテンツの制作に関して何ら関与していません」
まぎれもなくネイティブ広告ですね。コンテンツも押しつけがましい広告ではないし、バイラル性の高いリスト記事なので、多くの閲覧が期待されるでしょう。もともとMashableはソーシャルメディアとの連携に長けています。(@mashableのツイッターアカウントは445万人のフォロワーを擁しています)。2番目のコンテンツの場合、すでにソーシャルメディアで3100件もシェアされており、Mashableの編集記事と比べても見劣りしない人気コンテンツとなっています。
NYタイムズがプロモーションとしてMashableのネイティブ広告を選んだのは、MashableのオーディエンスにはNYタイムズに関心を寄せる人が多そうなことと、これまで接触が少なかった若いソーシャルメディアユーザーにリーチできそうなためです。
さらに興味深いのは、同社がリスト記事に力を入れようとしていることです。これからのデジタルメディアの在り方をまとめたNYタイムズの内部資料「Innovation Report」でも、リスト記事の重要性を示唆していたのです。これまで新聞は一過性のニュース記事に頼りすぎて、膨大な過去記事を埋もれたままにしていたのでとの指摘です。たとえば陳腐化しない文化やアート関連のレビュー記事などは、宝の持ち腐れになっていました。過去記事を素材にして上手い切口でまとめたリスト記事なら売り物になりそうです。
ただし、バイラルメディアのようにリスト記事をソーシャルメディア上で拡散させていくには、NYタイムズ以外の外部サイトのチャンネルも利用すべきです。それだけに、今回のMashableのネイティブ広告を活用したリスト記事配信は興味深い試みです。
参考
・NYT will run 4 native ads on Mashable(Poynter.)