NYタイムズのネイティブ広告、編集記事と比べて見劣りしない出来栄え

2015年2月24日
田中善一郎
マーケティング

先ほどNYタイムズ・サイトに掲載されていたネイティブ広告のコンテンツを見たのですが、読みごたえのある記事でした。

見出しが「World War II’s Greatest Hero: The True Story of Alan Turing」と、最近とみに話題になることが多くなったアラン・チューリング博士の話だったので、飛びつきました。波乱万丈のチューリング博士の人生について、何を語っているかが興味深かったからです。この記事の出だしの部分を、以下に掲げておきます。

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図1 NYタイムズに掲載されていた天才数学家のチューリング博士に関するコンテンツ

 

さすがにNYタイムズのコンテンツだけあって、同新聞の貴重なアーカイブ記事が引用され、無料でアクセスできるようにしています。彼はナチス・ドイツの暗号器エニグマを解読し連合国側に貴重な機密情報をもたらしたのですが、このエニグマを解説した1974年のNYタイムズの記事「The UltraSecret」を読むことができました。また彼は万能コンピューターのモデルを編み出してコンピューターの誕生にも大きな足跡を残していますが、揺籃期のコンピューター開発を紹介した1967年の記事「The Electronic Digital Computer: How It Started, How It Works and What It Does」も閲覧できます。

またチューリング博士は、優れた暗号解読者を探すために、1942年に難解なクロスワードパズルを英国の新聞(Daily Telegraph)に掲載したのですが、そのパズルがNYタイムズのクロスワード欄に再掲されています。挑戦してみてはいかがでしょうか。

でも彼の生涯は、1954年に自殺したことからも分かるように(冷戦時なので他殺説も)、長く追い詰められた人生を強いられました。特に同性愛であったことから第2次大戦下および戦後も英国法の下で迫害を受け、つい最近まで有罪の汚名を着せられてきました。この記事でも、国のヒーローであるはずの彼が恐ろしいまでの扱いを受けてきたことを物語っています。そしてそのチューリング博士の伝記を題材にした映画の予告編ビデオが、本文最後部にエンベッドされていました。

映画の話は本文中では全く触れていないのですが、この記事は編集コンテンツではなくてネイティブ広告コンテンツだったのです。映画会社The Weinstein Companyが配給する映画「The Imitation Game(イミテーション・ゲーム)」をキャンペーンするためのネイティブ広告です。確かに、図1で見られるように、記事上部に小さくPAID POSTと記され、その下に会社名とブランド名が表示されています。上部左に制作者として「Brand Studio」が記されていますが、これはNYタイムズ内のコンテンツスタジオ名です。本文を読んでから予告編ビデオを視聴すると、やはり映画も観たくなりますね。アカデミー賞の作品賞他8部門でノミネートされている注目の映画なので、なおさらですが(日本の公開は3月13日から)。

 

著者紹介
田中善一郎
田中善一郎
IT/メディアジャーナリスト。日経BP社で雑誌編集長、インターネット担当役員などを歴任。ブログ「メディア・パブ」(http://zen.seesaa.net/)にて海外のマスコミ・ウェブサービスを中心に、オンラインメディアの分析を行う。